ブラジルベンチャーキャピタルがブラジルの起業家が成功に至るまでの道のりを独占インタビューで迫る本シリーズ。
第三回のデータ処理効率化・モニタリングを支援するインメトリクスの創業者パブロ・カヴァウカンチ氏のインタビュー最終章です。
Yellow
インメトリクスが成長してくる中で2016年にYellowというアクセラレーターを設立しました。インメトリク社がシェアの70%を保有しています。
非常にアグレッシブなシードアクセラレーターで、最新のテクノロジーを導入し、マーケットから非常に有能な人材を集めており、様々な事業を手がけていますが、中でもコアなテクノロジーに根ざしたスタートアップの選別、支援に強みがあると自負しています。
私がここでいうコアなテクノロジーというのは、ウェブサービスやインターフェイス系の技術ではなく、高い業績を実現させるための原動力を作り出したり、人工知能といった分野に重点を置いています。
投資する会社を選ぶ際に、有能な人材がいて、アイディアも優れているものの、世界レベルのクオリティを目指す私たちの基準からみると技術面で今一つ欠けている会社を選びます。
これまで5社に投資をしてきましたが、全てうまく行き、特に技術面で大きな飛躍を遂げました。
アクセラレーターとしてもアマチュアレベルからは脱出し、トップレベルの仲間入りをする一歩手前といったところでしょうか。
アグレッシブ且つ迅速に動いて、これらの企業を早くマーケットに出し、買収される機会を伺えるようにすることを目指しています。
将来の展望
これからの弊社の将来の方向性を決める上で最も大切な基準は、経済的に儲かるかどうかにつきます。
仮にもしインメトリクスの売却を5億レアル(約200億円)でもちかけられたら、即応じて他のビジネスを始めるでしょう。現時点でのインメトリクスのEBITDAの18倍に相当する額ですから。
ただ、こんな投資家が現れることはなかなか想像できないので、当面は、会社が更に成長し、利益率や効率が上がり、より幅広い事業を手掛け、イノベーションを生み出せるように、粛々とと努力するのみだと考えています。
この点アクセラレーター事業のYellowは、インメトリクスよりも目立った特色があるので、高いリターンが得られる見込みがあるかもしれません。
IPOはまだ夢のまた夢ですが、何れにしてもどんなことでも起こりうると想定しながら動いています。
最も可能性が高いExitは戦略的売却でしょう。目標は、インメトリクスの市場価値を5年間で10億レアルまで高めることです。
Yellow、もしくはそのポートフォリオのスタートアップが成長することで、インメトリクスのバリュエーションに相乗効果を与えることもあるでしょうし、インメトリクス自身がオーガニックに成長を続けて収益を上げることも当然ながら重要な要素です。
今日では、技術の進歩でソフトウェアのような製品と人が介在するサービスといった区分はもはや消滅したと思います。このため私たちは、人に頼るサービスをどんどん縮小し、現在手掛けている事業の全てに人工知能を導入しています。
このような戦略に舵を切ってからEBITDAは増え続けており、今後も引き続きこの方向性で従業員一人当たりEBITDAを増加させることを目指しています。
起業家に向けた8つのメッセージ
1 自分より優れた人材を雇いなさい。
2 想定よりもコストが高い人物の雇用を検討する際は迷うものだが、悩んだ末の答えがイエスならリスクをとって雇うべき。
3 適材適所で人材を有効活用しよう。
4 営業・販売は会社にとっての酸素のようなもの。なければすぐに死んでしまう。最重要課題。
5 困難な決断に迫られる場合、原則に立ち返ろう。これはブレないためにとても重要。
6 保守的な姿勢と、リスクを厭わない姿勢を同時に保つことは、矛盾しているようだが、ビジネスを成功させる上で極めて重要。
7 利益の再投資は非常に重要。資産と資金を混同すると、失敗する可能性がある。
8 仕事上での親戚との付き合いはご法度。友人はパートナーとなりうるが、プロ意識のある関係の場合に限る。(インメトリクス設立時の規約の一つ)
パブロ・カヴァウカンチ:
13歳の時にビルゲイツに憧れ、15歳の時にはハッカーとしてプログラミングにその才能を発揮し、父の経営する企業の会計システムを構築。大学でコンピュータサイエンスを学んだ後、4年後に大学時代の友人とインメトリクスを創業。自身の貯金450万円を投資した以降は外部からの大きな出資を受けることなくインメトリクスを成長させてきた。
インメトリクス:
2017年で創業15周年を迎えるインメトリクスはシステム全体をモニタリングすることで問題の早期発見・解決を行うことでクライアント企業の効率的なデータ処理を実現する。同分野では銀行や流通を含めブラジルではダントツのトップシェアを誇り、コロンビア・チリなどラテンアメリカ各国へ進出し成功を収めている。過去9年間毎年85%の成長を続け、規模が大きくなった直近3年では毎年約40%の成長を続けている。 従業員は1000人以上で売上規模は約100億円。