ブラジル カーシェアリング

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滴滴の99買収でブラジル初のユニコーン誕生 南米のカーシェアリング業界(1)

中国の滴々がブラジルのカーシェアリング大手99を買収したことはブラジルでも大きなニュースになっています。ブラジルを含む南米ではカーシェアリングは一般的なものになっていて、日本よりもかなり浸透しています。
以前にもこのブログで南米のカーシェアリング業界について書きましたがここで最近の状況を含めてアップデートしたいと思います。

1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題
2 ブラジルのカーシェアリングはUBERの圧倒的優位な中、決着間近
3 ブラジル初のユニコーン誕生でスタートアップエコシステムにプラスの影響

 

1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題

日本では規制の関係でカーシェアリングがなかなか普及していません。

中南米ではブラジルに限らず、メキシコ、チリ、コロンビア、アルゼンチンでもUBERを含む複数のサービスが普及していますが、実は規制については似たような状況です。

異なるのは南米では元々規制を無視した白タクが日本よりも一般的だったこと、タクシーに不満を持つ消費者が多いこと、物事が法律通りに進まないビジネス環境、があることで業界・行政と小競り合いを繰り返しながら、一部のサービスを除いて多くのサービスが違法、もしくはグレーゾーンの中で運営を続けている状態が数年続いている状況です。

ブラジルでの規制当局との関連を紐解いてみると、まず最初にスタートしたのは99とEasyTaxiで、タクシーのみを呼べるアプリとしてサービスをスタートしました。その後、Uber、Cabify等が参入して一般ドライバーを呼べる状況が起きたことで99とEasyTaxiも一般ドライバーを呼べるサービスを加えて追随しました。

こうしたサービスは最初は納税を個々のドライバーに任せることで税務の問題を回避しようとしていたのですが、タクシー組合が違法として訴訟を起こし、多くの市でアプリ側がタクシーと同様の納税をすることでひとまず決着を得たので現時点ではUber含め、多くの市では合法なサービスと認められています。

なお、ブラジルの場合は規制の単位が市なので市によって使えるところ、使えないところがありますし、空港付近などで特別なタクシー協会の力が強いところはアプリ側が自主規制してサービスを使えないエリアを設定していた時期などがありました。

その後、現在再度ブラジルで争われているのは、タクシーと同様の車両・ドライバーに対する要件をカーシェアリングのドライバーにも適用するべきだという点です。

例えばタクシーに使える車両は必要な費用を払い、手続きを踏むことで当局から正式にタクシー業務が可能な車両として登録されます。手続きの中で必要な保険に入ること、車検を受けていること、車両の所有者が納税等の当然の義務を果たしているかが確認されます。

また、ドライバーも必要な手続き・テストを得ることで過去の違反歴や犯罪歴、適正な運転免許を保有しているかどうかを確認されます。

最終的な結論が出るまでにまだ時間がかかりそうですが、ドライバーと話していても「規制ができたら必要な登録作業を行うだけ」という人も多く、サービス自体が根本的になくなることはなさそうです。

なお、コロンビアでは通常のUBERは非合法ながら、UBER BLACKという高級ラインのサービスでは観光用等で乗客を乗せる資格のある車だけが呼べるようになっています。

アルゼンチンではUBERは必要な規制を守らずに違法状態で運営している一方、Cabifyは必要な規制をクリアした上、タクシーよりも高い自社規定を設けることで高いサービスレベルを維持しようとしています。

なお、中南米の規制の実態を見るときに注意したいのは、タクシーの規制が必ずしもタクシーの業務レベルを担保していないことです。エアコンもきかない車両も多く、古くて乗り心地が悪い車両が多かったり、ドライバーも平気で遠回りをしたり、接客態度も悪い、お釣りがない、道を知らない、タクシーが短時間誘拐に加担する、などなど日本では考えられない治安を含む問題まで抱えています。一度許可を取った後の継続的なチェックがほとんどなされていない状況です。

ただ、規制に守られてきたことで競争もなく、高い料金を請求される。利用者からすると当局が税金を徴収し、その組織内の幹部が賄賂で私腹を肥やしているだけではないか、という批判・不満が多いこともカーシェアリングが普及している大きな要因になっています。

第二弾 UBERの圧倒的なシェアで勝負あり 南米のカーシェアリング業界(2)はこちら

UBERの圧倒的なシェアで勝負あり 南米のカーシェアリング業界(2)