ブラジル・ベンチャー・キャピタルのインタビューシリーズ。今回はブラジルのベンチャーキャピタル、インベスト・テックのマネージングディレクター カルロス・ペッソア・フィリョ氏と弊社代表 中山充の対談形式でブラジルのスタートアップ・エコシステムについて意見を交わします。
第二章では起業がブラジルのキャリアパスでどうとらえられているか、また、ブラジルのエンデバーやアクセラレータなどの参画でエコシステムがどう進化してきたかを語ります。
起業というキャリアパスの捉えられ方
中山:日本でも20年前は大企業や公務員としてキャリアを積むことを多くの人が「ベストな選択」と考えられていました。ただ、私が起業した2000年頃と比べると、日本でも最近ようやく起業という選択肢が一般化しつつあります。日本でも大企業が倒産したり、成功する起業家が増えてきてロールモデルと考えやすい人が増えてきていることが影響していると考えています。
ただ、私がブラジルではまだ起業をすることの意味合いや受け取られ方はまだ日本と大きな違いがあると感じています。私が2012年にベイン&カンパニーのコンサルタントとしてブラジルに来た時は、同僚が同社でコンサルタント業務に何年も身を置く人生計画を築いていることに気がつき驚きました。ベインという会社に勤める人はブラジルでも比較的リベラルな人ですし、ベインは企業文化の中に起業精神を十分に持っている会社なので。
しかも、1998年に私が日本のベイン&カンパニーに勤め始めた時は、自分のビジネスを始めるために誰が先に独立するのか皆が競い合っているような感覚すらあったので14年前の日本よりも保守的なのか、と。
ただ、当時はブラジルに来たばかりで、点でしか見えていなかったのですが、数年ブラジルに身を置くにつれ、ブラジルのアントレプレナーシップが進化してきていると感じています。逆に私が来る以前の2000年頃に比べるとそれでも2012年の状況は良くなっていたのかもしれません。
エンデバーでは具体的にはどのような施策をおこなったのか、詳しく教えて頂けますか?
カルロス:実はエンデバーがブラジルで活動を始めたころに驚かされたのは、自らが起業していたり、起業家やスタートアップを相手に仕事をしている人々の数はかなりの数に及んでいることでした。ただ、やはりベインに行くような人とはちょっと層が違っていたかもしれません。
こうした当時のエコシステムに強く求められていたのは起業家として、もしくは経営者としてのトレーニングでした。エンデバーはそのような人材を集めて、全体のレベルアップを図るための取り組みを始めました。
2000年に私たちが最初に行ったイベントはジャングル・トレーニングと呼ばれたもので、当時のエコシステムに風穴をあけるものでした。それは、起業のブートキャンプのようなもので、ビジネスプランをデザインしなおすというものでした。
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