ブラジルの農業大国としての存在感は、近年ますます高まっています。
日本にとっても、大豆、鶏肉、オレンジジュース、コーヒーの輸入先として、ブラジルは重要なパートナーとなっています。
そんなブラジルのアグリビジネス分野は、B to Bビジネス市場として捉えることもできます。今、そこに向き合う意義とは一体何なのでしょうか。こちらでその5つの理由を挙げてみます。
1. 世界第5位の広大な国土
まず特筆すべきは、ブラジルの広大な国土です。
国土面積は、世界5位の8億3,600万ヘクタール。日本と比べ、23倍も広いのです。
世界の国々の面積をこのグラフで比較すると、意外と偏っていることが分かります。ロシア、中国、アメリカ、カナダ、ブラジル、オーストラリア、インドの7ヵ国だけで、世界の陸地面積のほぼ半分を占めています。
その中でも、赤道にまたがり、熱帯から温帯にかけた農業に適した広大な土地に恵まれた国こそ、ブラジルなのです。
なお、国連食糧農業機関(FAO)の2016年に公表したところでは、ブラジルは世界最大の淡水保有国であるとされています。地球上の淡水の12%がブラジルに存在し、欧州全体よりも42%、アフリカ大陸全体より25%多いとされています。土地・気候に加え、豊富な水資源にも恵まれていることにも注目です。
2. 耕地面積トップ5の国の中で、伸長率がダントツの1位
農地のうち牧草地を除いた耕地の面積で、ブラジルは8,800万ヘクタールを有し、国別で5位となっています。
このグラフからは、インド、アメリカ、中国、ロシア、ブラジルの5ヵ国に世界の4割強の耕地があることが分かります。
ここで特に注目すべきは、1996~2016年の20年間での各国の耕地面積の拡大率です。上位5ヵ国が伸び悩みを見せる中で、ブラジルは34%と突出して伸長しています。
3. 拡大余力もナンバーワン
ブラジル農牧畜研究公社(Embrapa)の推計によると、世界の農業で存在感を見せるブラジルにあって、現時点で耕作に利用されているのは国土のわずか7.6%に過ぎないとされます。
つまり、ブラジルはまだまだ耕地の拡大余地が大きいのです。
FAOのデータによると、ブラジルの農地(耕地と牧草地の合計)2億8,400万ヘクタールうち、耕地はその35%に相当する8,800万ヘクタールに過ぎず、残りの2億ヘクタール弱は牧草地となっています。
Embrapaは、そのうちの7千万ヘクタールを耕地に転換可能としています。言い換えれば、8,800万ヘクタールの現在の耕地を、その倍近くまで拡大できる余力があることを示しています。驚くべきポテンシャルです。
その一方で、自然植生の保護も心配されるところです。
Embrapaによると、国土の7.6%が農地として利用されているのに対し、自然植生は未だ66%残されているとしています。
自然保護と農業開発のバランスが求められるところですが、拡大余力のある耕作可能な土地を活用し、そして技術導入により生産性を高めることこそが、ブラジル農業の持続可能な発展には欠かせないと言えるでしょう。
4. 世界トップシェアの農作物を支える技術が求められている
ブラジルの主要な農作物・畜産物は、いずれも世界の生産の中で大きなシェアを占めています。
農作物(左グラフ)では、サトウキビとコーヒーの生産で世界トップシェア。大豆、トウモロコシ、綿花、バナナ、豆でもトップ5に入ってきますが、いずれも耕地の拡大が可能な点を考慮すると、まだまだ成長とシェア拡大が見込めます。
畜産物(右グラフ)では、牛肉、鶏肉、牛乳、豚肉、鶏卵、七面鳥といずれもトップ5に顔をのぞかせます。中でも牛肉と鶏肉は世界第2位で、ブラジルの存在感はよく知られたものとなっています。
1996年と2016年の生産量の世界シェアを比較した場合(左グラフ)、農作物では大豆、サトウキビ、トウモロコシ、綿花、コーヒーの5品目が伸長しています。
そしてそのグラフの下側に示すように、世界全体でのそれぞれの作物生産の伸長率を、ブラジルは大きく上回っていることも分かります。例えば大豆は、この20年間で世界で123%増加したのに対し、ブラジルは3倍以上と爆発的に生産を増やしているわけです。
畜産物(右グラフ)でも、同様に鶏卵を除く5品目で世界シェアを拡大しており、特に鶏肉と七面鳥の生産がこの20年間で大幅に伸びていることが分かります。
このように、ブラジルは今や世界の食糧需要を支える存在となっています。そして、その強みである農業を支える技術は常に求められています。それを貪欲に吸収し、さらなる高み目指そうとする、企業家精神に富んだブラジルのアグロビジネスの経営者たち。
そこには多くのビジネスチャンスがあり、そしてポテンシャルの高い優秀なビジネスパートナーと出会える機会があると言っても過言ではありません。
5. 大規模だからこそ、デジタル技術が生きる
ブラジルで生産される農牧畜製品の90%は、15の品目から成り立っています(左グラフ)。
農作物だけを見た場合、耕地の80%に相当する7千万ヘクタール余りが、大豆、トウモロコシ、サトウキビ、豆、小麦、コーヒー、コメの7品目の生産に利用されています(右グラフ)。
こうした広大な耕作地を経験と勘だけで管理し、生産性を高めていくことは今や不可能になりつつあります。衛星データ、リモートセンシング、精密農業、自動化、ドローン、農業経営管理 ── こうしたデジタル技術を活用した新たな農業手法やサービスが次々に登場し、導入されています。
広大な土地を有する大農場から小規模農家まで、生産者間の規模の差も大きいことから、こうした農業生産者をB to Bマーケットとして捉えた場合に、切り口次第で様々な参入方法が考えられます。
今年4月に開催された世界3大アグロビジネス展示会の1つ、ブラジルのアグリショー(Agrishow)の視察に訪れた農業情報設計社が提供するトラクター走行支援アプリAgriBus-Naviも、国別のダウンロード利用数が最も多いのが、全体の20%を占めるブラジルです。その導入の手軽さから、幅広い農家層で活用される可能性を秘めたサービスとして受け入れられているのです。
このように、無限の可能性が広がるブラジルのアグリビジネス分野。
このポテンシャルを理解するのに最適なのが、ブラジルで毎年開催されるアグリショーです。次回は2020年4月27日(月)~5月1日(金・祝)に開催予定です。ぜひブラジルにお越しになり、ブラジル農業の可能性をともに感じてみませんか?
また2019年7月16日(火)には、第1回ブラジル・アグリビジネス・フォーラム 東京 が開催されます。
農業情報設計社 濱田安之ファウンダー・CEOも登壇し、ブラジルのアグリショー訪問ツアーに参加して得られた手応えと、ブラジル農業市場のポテンシャルについて語っていただきます。皆さまのご参加、お待ちしております!
関連リンク:
7月16日(火)のフォーラム@東京の詳細はこちら:「第1回ブラジル・アグリビジネス・フォーラム」
2019年のアグリショー訪問記はこちら:「日本のアグリテック企業によるブラジル・アグリショー訪問記」
アグリショー訪問の様子は、ジェトロ短信にも紹介されています:「アグリショーで存在感を示した日本のアグリテック(ブラジル)」