研究会要旨
ブラジル日本商工会議所が主催する金融部会 “Future of Finance” に参加しました。今年度3回目の部会となり、現地金融セクターの専門家3名を招き、ブラジルの金融事情について議論が交わされました。
金融部会の様子 (Daniel Malandrin氏によるオープニング)
当日のプログラム / 3部構成
第一部 Opening: Bradesco venture capital – Superintendente, Daniel Malandrin
第二部 Innovation in Brazilian financial market: AB Fintech – Diretoria, Ingrid Barth
第三部 Innovation in Fundo BRAM
*過去の金融部会に関するレポート等はこちら (ブラジル日本商工会議所)
各セッションからの示唆
第一部 Opening: Bradesco venture capital – Superintendente, Daniel Malandrin
金融セクターでは、規制緩和等の波も受けて、従来のBank Centricity からCustomer Centricityへ移行しつつあるとされています。こうした変化に対応すべく、Bradescoグループのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)であるInovabra Venturesは、主にAI、マーケットプレイス、ブロックチェーン分野を強化しながら、ベンチャー企業にはBradescoのアセットを提供するというスキームをとります。
続いて、シェアリングオフィスのInovabra Habitatのご紹介もありました。スタートアップ支援実績では、ペイロール企業であるFolhacertaの高い満足度が示されました。
「単なる”イケてる貸オフィス”に価値はなく、オフィス提供企業は、入居希望企業の収益性やビジネスモデル等をスクリーニングし、”厳選”する事で、シナジー効果が生まれやすくなる。闇雲に入居企業を集めても、単にカオスになりかねない。」というMalandrin氏のコメントは興味深いものでした。KPMG Distrito & Leapのコンセプトと同様に、オフィス提供企業には”オーケストラの指揮者”としての重要な役割がある事を再確認しました。
第二部 Innovation in Brazilian financial market: AB Fintech – Diretoria, Ingrid Barth
Softbank Innovation Fundブラジル代表 André Maciel氏の、J.P. Morgan時代の元同僚であるIngrid Barth氏には、下記の様な質問にお答え頂きました。
Q. ブラジルのfintechの中でも、最もトレンディな分野は?
A. オープン・バンキング。未開拓のユーザー数も含めると、社会的インパクトも強い。中央銀行の制度設計も追い風。
Q. ブラジルと諸外国にみる、fintech普及の違いは?
A. 各国で経済や分野などコンテクストが異なるため、単純比較はできない。しかし、例えばインド政府がfintech開拓に積極的な様に、政府系機関による支援には違いがある。
Q. fintechにおける差別化の源泉は?
A. カスタマー・エクスペリエンス。例えば、クレジットカードやその他デバイスなどの”モノ”自体に長期の競争優位はない。重要なのは、顧客に最善のプロセスを提供する事。
Q. ブラジルでスタートアップ市場が近年活況である主な要因は?
A. シリコンバレーなどと比べ、ブラジルでは、従来はアーリーステージへの投資が手薄だった。現在は、投資家側も学習効果を重ね、そのようなシードへの投資も増加傾向にある。
Q. ブラジルのスタートアップ市場の課題は?
A. 人財不足。IT人財を育成する教育システムの欠如に加え、スタートアップ企業の給与水準が足かせ。
第三部 Inovation in Fundo BRAM
Bradesco Asset Managementにおける、AI活用による投資パフォーマンスの向上の事例が紹介されました。
*先週配信したオープン・バンキングに関するブログも併せてご覧下さいませ。
10月10日 Bank BS2フォーラム訪問記: ブラジルにおけるオープン・バンキングの現在地と今後
ブラジル南部発で初、ユニコーン誕生!Ebanxってどんな会社?
—ご案内—
11月22日(金)には、第2回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラム2019をサンパウロ市内で開催します。ブラジルと日本で注目の各種スタートアップやビジネスに迫る貴重な機会です。
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