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フォーラム便り vol.8 | DGベンチャーズ 井手高歩氏

フォーラム便りvol.1では、フォーラムの全体像と、ブラジルベンチャーキャピタルによるOpening Remarksを取り上げました。

vol.2以降は、全18セッションの模様をシリーズでお届けして参ります。

今回は、DGベンチャーズ 井手高歩氏による「日本のベンチャーキャピタル」のセッションをご紹介します!

DGベンチャーズ 井手高歩 氏

セッション要旨

従来のクローズドイノベーションにオープンイノベーションを組み合わせ、破壊的イノベーションの備えやイノベーションのスピード向上につなげる手法は、世界的な潮流になっています。日本企業の間でも、コーポレートベンチャーキャピタル(以下CVC)やオープンイノベーションは急速に普及。トヨタ自動車が15年11月に本格的に参加した未来創生ファンド、17年7月に米シリコンバレーで設立したトヨタAIベンチャーズなどが注目を集めましたが、日本経済新聞社の「社長100人アンケート」(17年12月調査)によると、CVCをすでに設立、検討している企業は約3割強にものぼります。また、大企業の自社ファンドによるスタートアップ投資額は18年上期(1~6月)に前年同期比2.4倍の509億円(国内331億円、海外177億円)、投資件数も前年同期比8割増の122件とともに過去最大となっています(Forbes記事より)。

こうした日本のコーポレートベンチャーキャピタル業界の先駆けとして、投資を推進してきたDGベンチャーズのインベストメントマネージャーを務める井手高歩氏に、同社の投資戦略やスタートアップの展望などを語って頂きました。

 

会社概要

DGベンチャーズは、デジタルガレージグループ(東証1部4819)の投資子会社として、創業前からIPOまで、幅広いステージで起業家をサポートします。創業期(シードステージ)には日本初のシードアクセラレータープログラムを提供するOpen Network Labを通じて、アーリー・ミドル・レイターステージではDGベンチャーズを通じてリスクマネーを提供しています。創業期の企業には、主に事業の仮説/検証サポートを、アーリーステージ以降はデータの分析支援や採用といった企業成長に欠かせないサポートを総力をあげて提供します。

DGベンチャーズは、主にインターネット分野において高い成長が見込まれる未上場企業へのリスクマネーを提供します。弊社は通常ベンチャーキャピタルが行うような、LPの出資形態ではなく、自己資金によるプリンシパル投資を行うことで、期間やステージ、国籍等の制限の無い、柔軟な形での資金提供を行っています。主な投資実績は米国、日本、インド、シンガポール、インドネシア、マレーシア、英国、イスラエル、ポーランド、オーストラリアなど、先進国から新興国まで幅広くカバーしています。企業のステージに併せて、海外企業の日本展開と、日本企業の海外展開を過去のノウハウをベースに支援します。具体的には、社内で抱えているエンジニア、デザイナー、アナリストがプロダクト開発、KPI分析などをサポートすることで、資金面だけでなく事業面での成長を支援します(同社ウェブサイトより)。

DGベンチャーズのウェブサイトより

DGベンチャーズのポートフォリオ

約200のスタートアップに累計でUS$20Bを投資し、先進国に限らず新興国もカバーしています。比率は日本で40%、米国で40%、アジア地域で10%、その他で10%となっています。投資分野はアグリテック、フィンテック、不動産テック、ものづくり、デザイン、マーケティングなど多岐に渡ります。Exit実績にはCyber Buzzや弁護士ドットコム等が含まれます。

DGベンチャーズの主な投資先

投資先の事例

DGベンチャーズによる各分野での投資事例が紹介されました。

IPO: ソーシャルネットワークサービスを通じたインフルエンサーマーケティングを提供するCyber Buzzは、2006年に創業し、2018年にDGベンチャーズによる出資を受けました。その翌年にIPOを果たし、バリュエーションはUS$140Mと推定されています。

アグリテック: フォーラムにもご登壇頂いた農業情報設計社にも投資します。アグリテックの中でも、グローバル市場で応用がきくAgriBus Naviなど付加価値の高いサービスを提供する点が高く評価されています。

フィンテック: Moneytreeは、個人向けに家計簿アプリ、法人向けに銀行口座情報等のAPIプラットフォームサービスを提供しています。2012年に創業し、2013年にDGベンチャーズが投資、現在ではステージC-1で、バリュエーションはUS$50-100M、累計の資金調達は5-10Mと推定されています。

ものづくり: 2006年に富士通研究所のスピンオフベンチャーとしてスタートし、通信・産業・医療・民生用の広い分野で新しい半導体レーザソリューションを提供するQD Laserには、2019年にシリーズFで出資しました。累計の資金調達はUS$88Mにものぼる見込です。

デザイン/マーケティング: 2011年に創業のGoodoatchは、日本とドイツの4拠点を構え、コンセプトプランニングやUI/UXデザイン、プロトタイピング、さらにデザイナーのキャリア支援等を行います。DGベンチャーズは2013年と16年にそれぞれ出資し、過去3年間の売上は+113%と順調な成長を見せています。

 

今後のコーポレートベンチャーキャピタル

CVCの狙いとして、投資リターンはもちろんですが、それ以上に、スタートアップ企業の技術を取り入れて、踊り場にある自社事業を成長させたいという側面が強い様に思われます。例えば日本航空のような伝統的な企業も、シリコンバレーにCVCを設立して新たなサービス開発を進めるなど、取り組みを進めています。

しかし問題はここから。シナジーは自然に生まれるものではなく、あくまで生み出すものです。大企業側としては、「スタートアップに投資すれば何かいいシナジーが生まれそう」といった、CVC流行への安直な飛び付きにも注意したいところです。

 

井手氏の紹介

DGベンチャーズのインベストメントマネージャー。慶應義塾大学法学部卒業。在学中、レザーブランドにてインターンとしてECサイトの運営業務に従事。新卒にて国内大手金融機関に入社し、海外機関投資家向け資産運用業務に従事。2018年4月より株式会社DGベンチャーズに参画。世界の有望なスタートアップに対し、シードからレイターステージまで幅広く投資 (同社ウェブサイトより)。

示唆に富んだ貴重なご講演を有り難う御座いました!

 

重要なお知らせ

第3回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラムを2月14日(金)に東京で開催します。

ブラジルのフォーラムでご登壇頂いた日伯のスタートアップおよびベンチャーキャピタルからゲストをお招きし、「ブラジル市場の印象、今後の事業戦略や勝算」などを語って頂きます。ブラジルへの事業進出や投資をお考えの皆さま必見です!

詳しくはコチラ