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10月9日 KPMG Distrito & Leap訪問記: ブラジルのコワーキング最前線

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私も幹事を務める、ブラジル日本商工会議所が主催 (JETROサンパウロ事務所およびKPMGが後援)するイノベーション研究会が10月9日に行われました。今年度の第3回目となる今回は、日伯の企業関係者ら約40名が参加し、サンパウロ市内のコワーキングスペースKPMG & Distrito Leapを視察しました。

 

WeWorkで話題になっているシェアオフィス、コワーキングスペースですが、主催者側が意図をもって活動を行うことで単純な労働の場所として以上の効果が出せるのかどうか、興味深く参加させて頂きました。

 

研究会の様子: 会末には、BVC中山代表が第2回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラム2019をご案内。

 

KPMG & Distrito LeapのCunninghum氏による、事業コンセプトのご紹介等に加え、スタートアップによるピッチや、「デジタル時代のエコシステムについて、企業はどのように対応すべきか?」の問いに関する参加者同士のディスカッションも交えた、インタラクティブな研究会となりました。

 

今回の視察を通じ、主に下記3点について、貴重な示唆が得られました。

 

1. コワーキングスペースは、単なる”貸しオフィス”に留まらず、スタートアップと大企業をつなぎ、イノベーションを促進する”ミニチュア版のシリコンバレー”へ進化。

2. デジタル時代に対応し得る企業文化、財務、自動化、顧客管理、技術革新が鍵。

3. KPMGとDistritoのシナジーをどのように実現し、スタートアップおよび大企業を支援出来るかが、今後の課題。

 

*第一回イノベーション研究会の様子はこちら → http://jp.camaradojapao.org.br/news/atividades-da-camara/?materia=19632

*第二回イノベーション研究会の様子はこちら → http://jp.camaradojapao.org.br/news/atividades-da-camara/?materia=19733

 

ブラジルのコワーキングスペース事情

コワーキングスペース概況

ブラジルのコワーキング・バーチャルオフィス協会によると、サンパウロ市内だけでも約 300 カ所のシェアリングオフィスが存在しています。新興企業の多い西部Pinheiros地区に、 300 ヵ所のうちの10%程が集中しています。

 

また、Veja São Pauloによれば、ブラジルでは、2017 年だけでシェアリングオフィス軒数が 20%増加しました。その背景として、2016 年の不動産不況により空家が増加し、新たな活用方法であるコワーキングスペースが注目された点が指摘されています。

 

*参照はこちら →
http://site.ancev.org.br/
https://vejasp.abril.com.br/cidades/coworking-we-work-expansao-mercado/

 

KPMG & Distrito Leapとは?

Distrito は、KPMG がパートナーとして参加するコワーキングスペースです。サンパウロ市内で 4カ所、クリチバ市内で 1 カ所のシェアリングオフィスを運営しています(2019年9月時点)。各オフィスがマーケティング、リテール、(今回訪問した)ファイナンスといった分野に特化している点が特徴と言えます。

 

JETROによれば、Distritoは入居するスタートアップによる大企業向け課題解決を支援し、スタートアップ側も、大企業による育成プログラム等に参加する事が出来ます。さらに、Distritoは、グループ会社を通じてスタートアップへの投資も行います。

 

また、KPMG & Distrito Leapのブランドは、Distritoのスタートアップ・エコシステムと、KPMGのテクノロジー等における専門性といった、相互の強みを組合わせたコンセプトと定義されます。

 

*参照はこちら →
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/f40e6e72ec40c56d/rp-brazil2018.pdf

 

視察からの示唆

1. コワーキングスペースは、単なる”貸しオフィス”に留まらず、スタートアップと大企業をつなぎ、イノベーションを促進する”ミニチュア版のシリコンバレー”へ進化。

 

サンパウロ市内に限らず、世界の大都市では、コワーキングスペースはやや飽和傾向にあると考えられます。

 

差別化を図る上では、設備やロケーションといった単なる「目に見える」部分に留まらず、KPMG Distrito & Leapが提供するような、企業同士のマッチング、イベント、アクセラレータ・プログラム、オープン・イノベーションといった、より「目に見えない」部分の価値が求められるでしょう。

 

2. デジタル時代に対応し得る企業文化、財務、自動化、顧客管理、技術革新が鍵。

 

「企業はどのようにデジタル時代のエコシステムに対応すべきか?」について、参加者同士で議論がなされました。

 

絶対解はありませんが、企業にとっては「過去の成功体験を活かしつつも縛られない文化、ROI試算、自動化に移行する前の十分なパイロットテスト、Design thinkingによる顧客のセグメンテーションと課題の把握、プロトタイプを活用した技術開発のリスク低減」等がポイントとして挙げられました。

 

また、企業にとって、イノベーション自体は「目的」でなく、顧客満足ひいては収益を高める為の「手段」という大前提を忘れない事も、鍵となりそうです。

 

3. KPMGとDistritoのシナジーをどのように実現し、スタートアップと大企業を支援出来るかが、今後の課題。

 

Cunningham氏に「KPMG & Distrito Leapの課題は何か?」と質問したところ、以下のご回答が得られました。

 

「理論的には、KPMGとDistrito両者のシナジー効果によりスタートアップ支援が充実化するのだが、改善の余地がある。例えば経営者、学者、デザイナーといったダイバーシティに富んだタレントを揃えても、単にバラバラになりかねない。」

 

運営年数や経験を重ねるごとに、こうした課題が改善され、KPMG & Distrito Leapが、スタートアップや大企業にとってより強力な後ろ盾になる事が期待されます。

 

おわりに

次回イノベーション研究会は、11月18日(月)にジャパン・ハウスにて開催予定です。

ブラジルの有力ベンチャー・キャピタルやスタートアップが勢揃いし、次なるイノベーションの可能性に迫って参ります!

当日の様子は、本ブログでも後日ご報告いたしますので、どうぞお楽しみに。

 

—ご案内—
来月22日(金)には、第2回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラム2019を開催します。

 

ブラジルと日本で注目の各種スタートアップやビジネスに迫る貴重な機会です。
どうぞお見逃しなく!
(お申込みはこちら)