カンファレンス要旨
11月18日、私も幹事を務めるイノベーション研究会等が主催する”日本・ブラジルオープンイノベーション交流会” に参加しました。先月のKPMG & Distrito Leapでの研究会に続く、今年度4回目の開催です。有力スタートアップ企業、アクセラレーター/VCらの協力により、ベンチャー企業と大企業が協業するヒントやコネクションを得る絶好の機会となりました。キャンセル待ちが出るほど活況な中、ジャパン・ハウスに詰め掛けた約100名の参加者は、各社のプレゼンテーションおよびパネル・ディスカッションに熱心に耳を傾けました。
弊社Brazil Venture Capitalによるプレゼンテーション
Brazil Venture Capitalもカンファレンスに登壇しました。弊社の歩み、アグリテックにおけるARPACや農業情報設計社、ドローンファンドとの取組事例、さらには、来年2月に日本で開催予定のアグリビジネス・フォーラムや今週金曜日にサンパウロで開催予定のスタートアップ・フォーラムなどについてご紹介しました。
3社からのKey takeawaysの振り返り
いずれの企業のプレゼンテーションおよびパネル・ディスカッションも興味深かった中、下記3社からのヒントを振り返ります。
1. Softbank Vision Fund
US$5B規模の南米ファンド立ち上げで話題のソフトバンク。「ラテンアメリカ市場はインドの2倍以上のGDPを有しながら、VCからの投資額は4%ほどに留まる」などの点に言及しながら、同市場の伸びしろへの期待感を示しました。ソフトバンクといえば、南米スタートアップへのUS$100M規模の大型投資が注目されがちですが、VCを通じた計US$300M規模のアーリーステージへの投資も実施しています。これは「小規模なマーケットには異なるコスト構造で臨む」「韓国・中国勢に遅れを取らない」「ベンチャー企業への税制優遇も追い風に、ラテン・アメリカ各国とのネットワークを強化する」といった目的であり、こうした戦略からも、南米市場のポテンシャルの高さが読み取れます。
担当者に質問してみたところ、ソフトバンク・グループ本体による”まっかっか”の赤字決算やWe Work再建など、課題山積ではあるものの、現時点では南米の投資戦略に目立った変更は無いようでした。
*ソフトバンクの南米およびブラジル投資戦略について詳しくはコチラ
2. SP Ventures
今週金曜日にサンパウロで開催予定のスタートアップ・フォーラムにもご登壇予定のFrancisco Jardim氏には、アグリテックの持続可能性やマクロ要因変動への耐性の高さ等について語って頂きました。
印象的だった言葉は「Willingness to get feet dirty」。
「現場主義」とでも言い換えられますでしょうか?実際に彼は、34のテクノロジーベンチャー投資、20以上の経営委員会、さらにはIoT、衛星画像、クラウドコンピューティング、マーケットプレイス、家畜管理、家畜繁殖およびブロックチェーン等のアグリテック企業の取締役を担当するなど、徹頭徹尾、現場主義の人物です。「投資しておしまい」ではなく、ベンチャー育成に誠実にコミットしていくSP VenturesそしてJardim氏の愚直な姿勢に、改めて信頼感を覚えた次第です。
3. Checklist Fácil
企業内のチェックリストの電子管理ソリューションを提供する、南部フロリアノポリス発のベンチャーです。トヨタのブラジルおよびメキシコ工場での導入ケースでは、既存のERPシステムと同期しながら、一ヶ月に約7万枚の紙ベースでの管理が削減され、生産性が向上した事例などが紹介されました。
トヨタのような世界的な生産システムを誇る企業との提携および成功事例は、Checklis Fácilへの強力な”お墨付き”となり、今後の一層の事業拡大が期待されます。マーケティング戦略へのヒントとして、闇雲に顧客獲得に走るよりも、インフルエンサーとなるハブ顧客を明確にしアプローチする方が、長期的な利益を生みやすいと言えそうです。
また、業界に限らず、ブラジルのスタートアップ企業が、日本企業(および諸外国企業)へサービスを提供する際には、クライアント側のコンプライアンスに対応することが、課題のひとつとして挙げられました。
—ご案内—
11月22日(金)には、第2回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラム2019をサンパウロ市内で開催します。
ブラジルと日本で注目の各種スタートアップやビジネスに迫る貴重な機会です。
どうぞお見逃しなく!