フォーラム便りvol.1では、フォーラムの全体像と、ブラジルベンチャーキャピタルによるOpening Remarksを取り上げました。 vol.2以降は、全18セッションの模様をシリーズでお届けして参ります。 今回は、HENNGE 汾陽祥太氏による「日本のスタートアップ市場」のセッションをご紹介します!
HENNGE 汾陽祥太 氏
セッション要旨
日本では、政府主導による「働き方改革」が推進され、インターネットを介して「誰でもいつでもどこでも安全に」仕事が出来るよう、ITインフラ整備への需要もますます高まっています。
今回のセッションでは、その様なニーズをいち早く形にして、市場を牽引してきたHENNGEの投資部門エクゼクティブ・オフィサーを務める汾陽氏に、同社のこれまでの歩みや競争力の源泉、今後の展望などについて語って頂きました。
会社概要
1996年にITソリューションを提供する企業として、HENNGEの前身であるHDEが創業しました。昨年10月には東証マザーズ上場を果たし、時価総額(公開)は21,613百万円にのぼりました。現在はおよそ150名の従業員を擁し、東京本社、大阪、名古屋、福岡、台北に拠点を構えます。主なクライアントには三井住友銀行、テレビ東京、JR九州など、パートナーにはIBMなどの企業が名を連ねます。昨年2月に現在の社名に改め、「HENNGE」には変化(Hennka)と挑戦(Challenge)の意味が込められています。
HENNGEの企業ロゴマーク
企業理念 | テクノロジーの解放
「テクノロジーの解放」で効率的な仕事環境を整える事を基本の理念とし、国際レベルで通用するIT企業になる事を目指しています。小椋社長は同社の採用ウェブサイトで以下の様に語っています。
「私たちは、ITが大好きで技術が人類を幸せにすると信じています。ありがたいことに、ITはめまぐるしい勢いで進化し、私たちの生活は日々便利になっています。一方で、企業においてはどの技術をどのタイミングで選択すれば良いのか、ということに迷うことも少なくありません。
こうした状況の中で、ITが大好きな私たちがお客様のためにできることは、未成熟な果実である新技術を積極的に自分たちで食べ続けて、何回もお腹を下したり、病院に運ばれたりしながら、どの果実がお客様にとって役立つ可能性があるのか、あるいはどの果実が危険であるか、といったノウハウを積み重ねること。その経験をもとに、マーケットにとって最適な一皿を開発し、お客様に広く提供することです。私たちは、どのお客様よりも多くの変化と失敗を経験し、毎日猛勉強を絶やさないアーリーアダプターであり続けたいと考えています。
この考え方を、Eat unripe fruits and make mistakes early.と称して企業活動の根本に置き、経営理念である「テクノロジーの解放」を具現化するためのもっとも大切なサイクルと位置づけています。」
2014年からは社内公用語も英語とし、同社のグローバル展開への意識の高さが伺えます。
HENNGEのあゆみ
1996年にHDEが創業し、97年にはLinuxの管理ソフトウェアHDE Controller、2000年にはCRMソフトウェアHDE Customer Care、そして2011年にはHENNGE Oneを提供開始しました。ドメインは時代と共に変化しつつも、テクノロジーの解放という理念は変わりません。
コア・サービスである「HENNGE One」とは?
「Identity as a Service」としての、Single Sign On (SSO)の技術を基にしたクラウド型の認証システムです。具体的には、Office 365やSalesforceといったSaaS導入企業において、従業員がいつでも安全にアクセス出来るようにサポートしています。例えば、とある日系メーカーは、某社内基幹システム(SaaS)を導入していましたが、以前は社外ネットワークからはアクセスが出来ず、システムを通じて業務を遂行するためには、オフィスや工場に行かなければならず、従業員にとっても会社にとっても大きな負担となっていました。そこで、HENNGE Oneを導入することで、誰でもいつでもどこでも安全に、モバイルワークを実施出来るようになりました。結果として、会社全体の生産性や従業員の満足度も向上し、HENNGE Oneはもはや、なくてはならない「縁の下の力持ち」となっています。
現在では業種を問わず幅広く導入され、2019年5月時点でユーザー数は130万人にものぼります。周辺機能としてセキュリティやEメールのアーカイブ等のサービスも提供しています。SaaSの開発や導入が進むほど、HENNGE Oneへの需要も高まるという好循環を生み出しています。
HENNGE Oneのイメージ
数字で見るHENNGEの成長
売上に占める経常収益は、2012年度の54%に対し、2018年度には93.6%にまで達しました。年間経常収益は、2018年度は前年比134%の成長を記録しました。HENNGEのソリューションが、前段で取り上げたメーカーの様なクライアントを着実に惹きつけている証拠と言えるでしょう。
国際色あふれるインターン制度とダイバーシティ
HENNGEでは次世代のグローバル人材を育成すべく、インターンシップを実施しています。応募者は140ヶ国から9,317人、研修生は22ヶ国から77人の実績があります(2019年5月時点の累計)。外国人従業員比率も、2012年の1.14%から2018年の19.18%とダイバーシティに富んだ環境を整えています。
今後の展望
今後は「国内外販売地域の拡大と先発者優位の獲得」、「従業員数の多い企業の開拓」、「顧客あたりの収益の拡大」を三本の矢として事業を展開していくそうです。これにあたり、HENNGE Oneの追加機能の開発、新規事業開発、さらにスタートアップやベンチャーキャピタルへの投資にも注力したい構えです。テクノロジーの解放という理念は守りつつ、どのように事業展開が「変化」していくのか、ますます関心が高まります。
汾陽氏の紹介
HENNGEの投資部門エクゼクティブ・オフィサー。早稲田大学でコンピューターサイエンス専攻中に、インターンとして1998年にHENNGEに参画。以来、アジア事業や人事部門のマネジメントを歴任。
示唆に富んだ貴重なご講演を有り難う御座いました!
重要なお知らせ
第3回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラムを2月14日(金)に東京で開催します。
ブラジルのフォーラムでご登壇頂いた日伯のスタートアップおよびベンチャーキャピタルからゲストをお招きし、「ブラジル市場の印象、今後の事業戦略や勝算」などを語って頂きます。ブラジルへの事業進出や投資をお考えの皆さま必見です!