フォーラム便りvol.1では、フォーラムの全体像と、ブラジルベンチャーキャピタルによるOpening Remarksを取り上げました。 vol.2以降は、全18セッションの模様をシリーズでお届けして参ります。 今回は、TransfeeraのGuilherme Verdasca 氏による「ブラジルのフィンテック」のセッションをご紹介します!
Transfeera, Guilherme Verdasca 氏 (写真右)とブラジルベンチャーキャピタル 中山
セッション要旨
ブラジルで今日まで誕生したユニコーン12頭のうち、Nubank、Pag Seguro、Stone、EBANXなど、フィンテック企業はおよそ三分の一を占めます。四社以外にも、マイクロ・ファイナンスへのニーズの高まりなどを背景に、ブラジルでは金融分野のスタートアップがしのぎを削ります。
第二回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラムでは「ブラジルのフィンテック」のセッションを設け、四社からゲストをお招きしました。今回のブログでご紹介するのは、オープンバンキングを通じて、企業・消費者・銀行間の低コストで効率的かつ安全な決済サービスを提供するTransfeera社です。CEOを務めるGuilherme Verdasca氏をお招きし、ブラジルの銀行業界の課題やTransfeeraのソリューションと実績、今後の成長戦略などを語って頂きました。
10月25日 金融部会 “Future of Finance” 訪問記: ブラジルの金融は何処へ?10月10日 Bank BS2フォーラム訪問記: ブラジルにおけるオープン・バンキングの現在地と今後
会社概要
Transfeeraは2017年にブラジル南部のサンタカタリーナ州で創業しました。Transfeeraは、顧客と銀行間の送金コストや効率性を削減するプラットフォームを提供しています。従業員は10名ほどで、弊社ブラジルベンチャーキャピタルで以前にインタビューを実施した、ブラジルのフィンテック先駆企業であるContaAzul出身のGuilherme Verdasca氏、Rafael Negherbon氏、およびFernando Nunes氏の3名によって設立されました。2019年にはVISAのアクセラレータプログラムにも選出され、シリコンバレーとサンパウロで事業開発に磨きをかけました。
Transfeeraの経営陣
ブラジルの個人向け融資が抱える課題
ブラジル中央銀行の調査によると、2017年時点で、ブラジルの銀行は、大手五行が82%のシェアを占めていました。これにより、ユーザーは銀行決済の利用について高い手数料を強いられるという問題がありました。また、例えば企業が顧客に請求する際に、銀行ごとに異なったAPIによって、取引および顧客毎にCPF・CPNJ(日本のシステムに例えるとマイナンバー)、氏名、銀行、口座番号などを認証するのに手間がかかり、全体の約10%の決済が拒否されるという事態が発生していました。さらに、不正アクセスのリスクも高いそうです。Eコマース市場はじめオンライン上のビジネスが発展を遂げてい行く上で、お金のやり取りがモタつく事は、経済損失を招きかねません。
Transfeeraが提供するソリューション
上記のペインポイントを解決すべく、BomPraCreditoは下図の「脳みそ」の機能を提供しています。銀行に紐づいた個人情報を管理し、決済時の認証をスムーズに行います。これにより、かつて約10%ほどがリジェクトされた決済は大幅に改善したそうです。この結果、2017年以来、金額でおよそUS$250M、件数で1M以上の決済を仲介してきました。2017年5月時点でUS$12.5Kであった月間の取扱額は、2019年10月には約US$15Mにまで成長しています。顧客については、Unilever、Kimberly Clark、Ambev、EBANX、ifood、Rappiなども含めた150以上の企業にサービスを提供しています。
Transfeeraのビジネスのスキーム(イメージ図)
数字で見るTransfeera
創業からおよそ二年で、Transfeeraの収益はおよそUS$550Kにまで成長しました。仲介した決済の取引数に応じて課金する仕組みをとります。昨年八月に損益分岐点を突破し、月間あたり15%の順調な収益増を記録しています。
Transfeeraの主要な顧客群
Transfeeraの投資家と次の資金調達計画
投資家には、Curitiba Angels、EBANX Capital、Conta Azulの共同創業者であるZaratine氏、BzplanのパートナーであるAndrade氏などが名を連ねます。また、次回のおよそUS$1.3Mの資金調達計画も示されました。使途は、ブランディング、営業・マーケティング機能の強化、製品開発、南米市場開拓、決済機関としての認可取得などだそうです。南米市場開拓については、ブラジルと同様の決済の課題を抱える国があるとみられ、2020年中に市場テストを実施したい考えです。
Transfeeraの次回資金調達計画
おわりに
かつて少数のメガバンクがブラジルの金融業界を牛耳っていましたが、政府主導のオープンバンキング化により、着実に状況は変わりつつあります。昨年に参加したオープンバンキングのセミナーでも、このトレンドに沿って、フィンテックの中でも、オープンAPIや決済関連での需要が特に高まるだろうという議論がなされていました。Transfeeraは、この流れをいち早く読み取り、ユーザーの痛みを解決してきました。
筆者自身も、例えばブラジルでオンライン決済する際、日本のクレジットカードがリジェクトされる機会が頻発し、さらにカード情報が流出し不正使用のトラブルに遭遇した経験もあります。Eコマース市場の高まりから、海外の消費者によるブラジル及び南米のオンライン決済の利用機会が増えるとみられる中で、決済の効率性と安全性には改善の余地がありそうです。投資家としてはもちろん、ユーザーの視点からも、Transfeeraのようなサービスが普及していく事に期待が高まります。
Verdasca氏の紹介
TransfeeraのCEO。同社製品の戦略全般とユーザーエクスペリエンス管理を担当。2019年にはVISAが推進するシリコンバレーのアクセラレータプログラムに選出。以前はContaAzulでUXデザインを経験。サムスン、LG、ノキア等のテクノロジー企業が参画する国際プロジェクトにも参加。
示唆に富んだ貴重なご講演を有り難う御座いました!