中国の滴々の99買収で注目を集めるブラジルのカーシェアリング業界のまとめ第三弾です。
ユニコーンの誕生でブラジルのスタートアップエコシステムの活性化が進むでしょう。
(前回のブログはこちら)
1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題
2 ブラジルのカーシェアリングはUBERの圧倒的優位な中、決着間近
3 ブラジル初のユニコーン誕生でスタートアップエコシステムにプラスの影響
今回の滴滴の99買収時の企業価値はUS10億ドルと言われています。これで99はブラジル初のユニコーン企業となったことを意味します。
下記のTechCrunchの記事によると2017年1月に投資した100億ドルに加えて今回900億ドルを出資、うち600億ドルは既存株主に、300億ドルは会社への資金注入となっています。
これまでの99への投資家をCrunchbaseで見てみるとMonasheesというブラジルの最古参のベンチャーキャピタル、米系のQualcomm、Tiger Global Management、Riverwood Capitalが並び、2017年1月に滴滴が、2017年5月にソフトバンクが投資をしています。
https://www.crunchbase.com/organization/99taxis
この結果を受けてブラジル内でMonasheesの勢いは強まるでしょうし、米系ベンチャーキャピタルのブラジルマーケットへの注目も以前よりも高まるでしょう。
また、この数年、ブラジル国内の富裕層がファンドを設立するなど、ベンチャーへの投資を増やす傾向にありましたが、その勢いを後押しすることになるでしょう。
これまでの最大の企業価値の買収案件は価格比較サイトのBuscapeのUS3.4億ドルと言われているので過去の最大の成功事例の3倍に相当する金額です。また、10億ドルのユニコーンとしての節目を超えたのもシンボリックな出来事です。
したがってブラジル国内のベンチャー企業にとっては資金調達がしやすい環境になりますし、投資家間での競争の高まりと、Exitの期待価値が高まることがあって資金調達時のバリュエーションがあがるでしょう。
長期的にはブラジルでも起業を志す人が増えてくることになるので、ブラジルのスタートアップのエコシステムが発展する大きな影響のあるイベントであったと思われます。
一方で短期的な懸念事項としては、投資家の資金供給量の増加と、投資対象となる事業を立ち上げる起業家の増加を比べた場合に、投資家の資金供給量の増加は短期間で増加しやすいので資金供給過多の中、ちょっとしたベンチャーバブルが起きる可能性があげられます。
とはいえある種のバブルを何度か繰り返して産業として成熟してくるのが各国のスタートアップエコシステムの成長パターンでもあるので、中長期的にベンチャー企業の成功事例が増えていくことに大きな違いはないと思います。
ブラジルは日本と違ってIPOが非常に難しいマーケットですので、こういった海外企業による戦略的買収がベンチャー投資の基本的なExitパターンなのですが、戦略的な買収でもユニコーンが出た意味合いは大きいです。
ソフトバンクが99に直接投資をした後、投資先の滴滴を通じてブラジルベンチャーへの歴史的な投資事例に参加していたことも私どもブラジル・ベンチャー・キャピタルにとってはポジティブな要素として受け取っています。
前々回のブログはこちら https://blog.brazilventurecapital.net/jp/2018/01/09/carsharing-update-1/
前回のブログはこちら https://blog.brazilventurecapital.net/jp/2018/01/10/carsharing-update-2/