日本のアグリテック企業によるブラジル・アグリショー訪問記

Agrishow

ブラジルで毎年4月末に開催されているAgrishow(アグリショー)は、すでに25年間続いているもので、ドイツやアメリカで開催されるアグロビジネス関連イベントと並んで「世界の3大アグロビジネス展示会」の1つと言われています。 2019年4月30日~5月3日にブラジルで開催されたアグリショーは、サンパウロ市から北に約300㎞のヒベイロン・プレット市で開催され、52万平方メートルの広大な敷地に800社以上が出展、来場客数15万9千人が集いました。出展ジャンルは、農業機械、器具、肥料・農薬、処理・貯蔵・灌漑設備、IT、自動車、金融、サービスと多岐にわたります。 今回は、スマートフォンやタブレットをモニター画面とするGPSガイダンスシステムで、トラクターの正確な走行をサポートするアンドロイド向けのアプリケーションAgribus-Naviを開発した日本のアグリテック・農業情報設計社をブラジルに迎え、このアグリショー訪問を中心に、ブラジルのアグリテック関連企業の訪問を行なう3泊4日のツアーを企画・実施しました。 この記事ではその模様をレポートします。 カンピーナスのアグリテック企業へ 初日は、サンパウロ市から北西に100㎞のカンピーナス市へ。 サンパウロやリオデジャネイロといった巨大市場に近く、物流面で好立地なために製造業が進出したのに加え、世界大学ランキングの最新版でブラジルで最良の大学とされるサンパウロ州立カンピーナス大学の存在もあり、近年ではIT企業のクラスターが形成されています。内陸に広大な農業地帯を控え、そして製造業とITがクロスする土地柄から、アグリテックの活動も目立っています。 ここではまず、ドイツ系自動車部品メーカBOSCHを訪問。自動車の電装品では世界トップクラスの同社も、ブラジルの強みである農業分野は未知の領域であったため、社内スタートアップを立ち上げるにあたりどのようなプロセスを経たのかの詳細な解説を受けました。農業情報設計社の製品と関連性から、農業機械向けの電装品の生産を行なう事業部との協議を始めることとなりました。 続いて、土壌サンプル検査の自動化装置を開発するIMBR社を訪問。農地における土壌サンプル収集とトラクターの正確な位置情報という点で接点が見られたほか、ブラジルの農業研究機関に豊富なコネクションを持つ同社との協業方法も検討されました。 3件目には、センサー等を通じて農地から収集される情報を視覚化し、農場主による運営上の意思決定を支援するプラットフォームを運営するagrosmart社を訪問。若き女性経営者Mariana... Read More

2019年のブラジルのスタートアップシーンの展望

Brazil Startup

ブラジルはギリギリ2018年なので今年最後のブログとして2018年を振り返りつつ、2019年のブラジルのスタートアップシーンの展望をまとめてみたいと思います。 まずは2018年を振り返りたいと思います。 大型Exitの始まり 2018年はブラジルのスタートアップシーンを一言で言うと「大型Exitが始まった年」でしょう。 ライドシェアの99が滴滴へ売却されてUS$1BとしてのユニコーンExitが話題になった1月、決済サービスのPagsegroのニューヨーク証券取引所に上場しました。更には教育系のArcoがNASDAQに上場し、それに続いて決済サービスのStoneのNASDAQ上場は今年のNASDAQ最大のディールとなり、一時期企業価値は約1兆円に迫るほどになりました。 これで今年はもう終わりかと思いきや、11月にはフードデリバリーのiFoodがUS$500Mの追加調達を受け、既にユニコーンレベルになっていることが公表されるという、ニュースの多い年となりました。 大型調達が国内で実現可能に もう大型案件は出尽くしたかというまだまだそんなことはなく、100億円以上の投資を受けたスタートアップも既にユニコーンレベルにあった無店舗銀行のNubankのほか、同じく無店舗銀行のNeon... Read More

STONEがNASDAQ上場で新たなユニコーンに

Stone

ブラジルの決済ソリューションを提供するStoneが2018年10月1日にNASDAQにIPO申請後、10月25日に上場しました。 IPO資料によると公募株価はUS21-23で約10億ドルを調達、企業価値としては約60億ドルを想定していました、公募後に株価が30ドルを超えたため、企業価値は約90億ドル、約1兆円企業になりました。新たなユニコーンの誕生どころか、もう一息で企業価値100億ドルを超えるデカコーンクラスの上場となりました。 StoneはブラジルのPaypal、Stripeになると言われていて、公開前にバークシャー・ハザウェイ、ジャック・マーのアントフィナンシャルからの買い付けを取り付けていたのも高株価になった要因と言われています。 創業2012年からわずか6年でのNASDAQへのスピード上場、ブラジリアンドリームという感じでしょうか。私も上場にあわせてWhatsappで友達のStoneの役員とやり取りしていましたが本当に興奮して喜びにあふれているビデオやメッセージが送られてきまいた。 顧客数約20万、上半期の売上高が約200億円ですが、前年同期比のほぼ倍増という伸び方を評価されての数字でしょう。市場が大きいブラジルはポテンシャルの大きさはワールドクラスなことを改めて見せてくれた案件です。 創業者のAndré... Read More

5月30日 ブラジルフィンテックセミナー@大手町のご案内

ブラジル・ベンチャー・キャピタル創業者 中山充

ブラジルは人口世界5位、インターネット利用者数世界4位の巨大市場で、アメリカのIT企業にとってはアメリカの次に大きな市場です。 また、インターネット・モバイルバンキングの普及率、クレジットカード決済率も高い、高度な金融システムを有する国です。一方で、国民の経済レベルに大きな差があり、多様な国民のニーズに応えるべく様々なサービスが提供されています。 この度、5月30日(水)... Read More

ブラジルのフィンテック Nubankが今年3社目のユニコーンに

2018年はブラジルのITスタートアップにとって歴史的な年になるかもしれません。1月3日にライドシェアの99がソフトバンク傘下の滴滴に買収されユニコーンとなった3週間後の1月24日にはPagseguroがニューヨーク証券取引所に上場してユニコーンとなったあと、3月2日現在では時価総額がUS$10Bにまで達しています。 そして2月28日にはブラジルのフィンテックの象徴的な存在でもあるNubank(ヌーバンク)がシリーズEとしてUS$150Mを企業価値B$1Bを超える条件での資金調達を完了し、この2ヶ月で3社目のユニコーンとなりました。 Nubankは2013年にDavid... Read More