ブラジルのフィンテック Nubankが今年3社目のユニコーンに

2018年はブラジルのITスタートアップにとって歴史的な年になるかもしれません。1月3日にライドシェアの99がソフトバンク傘下の滴滴に買収されユニコーンとなった3週間後の1月24日にはPagseguroがニューヨーク証券取引所に上場してユニコーンとなったあと、3月2日現在では時価総額がUS$10Bにまで達しています。 そして2月28日にはブラジルのフィンテックの象徴的な存在でもあるNubank(ヌーバンク)がシリーズEとしてUS$150Mを企業価値B$1Bを超える条件での資金調達を完了し、この2ヶ月で3社目のユニコーンとなりました。 Nubankは2013年にDavid... Read More

Ciatech創業者マルセロ・サトウ インタビューPart 3: Ciatech売却と新たなキャリア

CiaTech創業者マルセロ・サトウ

ブラジル・ベンチャー・キャピタルの起業家インタビューシリーズ。 企業向けのエデュテックで大きく成長したCiatechをブラジルのデジタルビジネス大手UOLに売却したマルセロ・サトウ氏のインタビューの最終章です。自分で長い年月をかけて育ててきた事業を離れる難しさとその後のキャリアについて語ります。   社内体制の強化の必要性 わが社に関心を寄せる海外投資ファンドが現れたことで、会社の大きな弱点が明らかになってきました。それは、これまで深く考えたことのなかったマネージメントやガバナンスといった点でした。これまで、外部株主がいなかったために、独立的に会社を運営することができていたのは非常に良かったのですが、そのままでは企業が成長するにつれて、十分な体制とは言えなくなってきました。 海外の投資ファンドは将来の事業計画を求めてきましたが、社内には日々の支払と請求を行う経理的な機能しかなく、会社の将来を計画を立てて考えるということを全くしてきませんでした。結局、この弱点によって、会社のバリュエーションが本来あるべき企業価値よりも20%から30%も低く見積もられてしまいました。 当時、私は会社のIT部門を、アレックスは営業面を担当していましたが、これらの弱点を克服すべく、2011年の人事異動で私の部下だったIT部門の部長を私のポジションに昇格させ、私がファイナンスの担当役員となることにしました。同時に、ある程度の規模がある企業に相応な社内システムを導入しました。 こうした経営企画面での強化によってCiatechは予想以上の成長を遂げることができました。当時数億円だった売上規模を3年間で倍増させることができたのです。 それまでは事業計画など考えずにやってきたのですが、将来を見据えることで必要な投資などの施策を早い段階で打つことで企業の持つポテンシャルを最大限発揮させられること重要さを肌で感じました。   新たなパートナーの参画 2011年から2013年、会社は更なる飛躍を遂げました。私が財務担当役員として社内体制を整えたことに加えて外部から株主が新たに参加したのです。 アレックスはブラジルの起業家コミュニティのイベントなどに頻繁に通っていましたが、Endeavorが催したイベントでアステラ・インベストメントというファンドのトップであるエジソン・ヒゴナッチと知り合いました。エジソンはメンターとなり、私たちになかった視点で様々なアドバイスをくれました。 その後、エジソン率いるアステラが2012年に出資し、株主として一緒に会社を成長させていくパートナーとなります。このパートナリングによってCiatechはまた一段高いステージにレベルアップすることができました。 Ciatechそ創業した当時は自分達から投資家を探すということはしていませんでしたし、その必要もありませんでした。また、当時のブラジルのスタートアップに対する投資環境も未熟なものでした。 しかしブラジルのスタートアップへの投資環境は大きな変化を遂げており、成長のための資金調達がしやすい環境が整いつつありました。エジソンが投資家として十分な経験があったことで、ファンドとのやり取りもスムーズに行うことができるようになりました。 私たちは事業計画を収益源ごとの実績に基づいてファイナンシャルにも、オペレーショナルにも立てることができるようになり、「もし1000万レアルあったら何に投資するか」といった質問にも答えられるようになりました。エジソンが入る前はとてもそんな質問に答えるスキルも準備もありませんでした。 こういった質問に答えることは自分たちにとっても重要なものでした。これまで自社のオーガニックな成長のみを考えてきたのですが、投資を受けることでその成長を加速させることを考えられるようになったからです。投資家たちが好んで使う「指数曲線的な成長」という観点と投資を結び付けて話せるようになりました。 Ciatechは創業当初から大手のクライアントのプロジェクトを受けることができたこともあり、それまで自社の利益だけで成長を続けてきました。そして、私たちの目的も大金を手にすることではなかったので、こうした投資家と話をしたものの、1レアルも必要ではありませんでした。 その後、ブラジルのオンラインビジネスのコングロマリットであるUOLが私たちにアプローチしてきました。Ciatechは資金を必要とはしていませんでしたが、UOLは教育部門のホールディングカンパニーを立上げ、インターネットの教育事業のリーダーになるという大きな戦略を打ち出しており、そのために傘下に置く事業とともに教育事業全体をリードする経営陣を探していたのです。 こうしてUOLとの話を定期的に行う2012年の年末頃、別のベンチャーキャピタルからの出資の話も並行して進みつつありました。私もアレックスもCiatechを売却するということに抵抗があったのです。しかし一方では、今後事業を違うレベルで拡大できるようなパートナーを必要としていることも理解しつつありました。 この時点でCiatechは企業向けのオンライン研修市場の大手プレイヤーの1社となっていました。創業から16年間、アステラの投資を受けるまですべて自分たちの資金で成長してきました。しかし同時にこのままどこまで成長するのか、本当に自分たちだけで頂点に立てるのかという懸念もありました。 私もアレックスも大学の卒業前から心血を注いできたCiatechを売ることには当然抵抗がありました。私たちの卒業制作でもあり、私たちの最初の子供でもあり、会社自体を愛していました。Ciatechで10年以上をともにした仲間である家族のようなエンジニアが何人もいるわけですから。事業をはじめた時とは真逆で、非常に難しい決断を迫られていると感じていました。 しかし、こうした要素をすべて考えた上で、ここまでの長い道のりを振り返りつつ、目の前にあるオポチュニティを考えた時に、今後の事業をより安心して進められる、リスクを最小化する決断をしました。 最終的には大きな買収金額のオファーを受けたことに加えて、UOLとともにブラジルのインターネット教育事業のリーダーとなるという可能性も含めて、UOL... Read More

Ciatech創業者マルセロ・サトウ インタビューPart 2: 急成長の先に何があるのか?

CiaTech創業者マルセロ・サトウ

ブラジル・ベンチャー・キャピタルの起業家インタビューシリーズ。 企業向けのエデュテックで大きく成長し、ブラジルのデジタルビジネス大手、UOLに高いバリュエーションで売却を果たしたCiatechの創業者、マルセロ・サトウ氏のインタビュー第二弾です。 ピヴォットを繰り返しながらようやくやりたかった事業領域で成長軌道に乗り始めたところで経営陣内でのビジョンの違いという問題に突き当ります。   Ciatechの成長 2000年と2001年はCiatechにとって大きく飛躍する年になりました。金融機関向けに様々な製品を供給するようになったのです。当時銀行が欲しがっていたのはカタログでも研修用のコンテンツでもなく、インターネットバンクのインストール用CD-ROMでした。ブラジルでもインターネットバンキングを普及させることで顧客が店頭にいく必要性を減らし、銀行のコスト削減につなげたいという流れが加速しつつありました。 さらに、当時は多くの人がインターネットに不馴れであったため、このCD-ROMにインターネットバンクの設定から利用までの手順をインタラクティブに説明する機能もつけました。このインストラクション機能付きCD-ROM商品は最初ウニバンコ銀行で採用されて成功を収めると、イタウ銀行、ブラデスコ銀行等々、続々と他の銀行からも引き合いがきて、Ciatechのヒット商品になりました。 ただ、当時のCiatechはインターネット企業ではなく、開発はすべてオフラインでしたし、製品もオフラインであることをベースに作られたものしかありませんでした。私たちはオフラインベースの商品からオンラインベースの商品へシフトチェンジをする必要性を感じ始めました。 しかし、問題だったのはクライアント側とは温度差でした。当時はまだインターネットのようなオープンなネットワークには懐疑的な見方もあって、イントラネットのような閉じたネットワークでのサービスを求められていたため、当面はイントラネット分野の開発を進めることにしました。そしてこの流れが、将来的にはオープンなオンラインサービスの開発につながることになります。 わが社の最初の成長時期がサンパウロ市内に越した後の2000年以降とすると、第二の成長時期はオンラインサービス事業に参入した2000年から2006年の頃と言えるでしょう。クライアント企業も徐々にオープンなインターネットへ様々なことを移行する時期がやってきます。 この頃、ナイキや大手タイヤメーカーのPirelliやContinental... Read More

Ciatech創業者マルセロ・サトウ インタビューPart 1: Ciatechの創業

CiaTech創業者マルセロ・サトウ

ブラジル・ベンチャー・キャピタルの起業家インタビューシリーズ。 企業向けのエデュテックで大きく成長し、ブラジルのデジタルビジネス大手、UOLに高いバリュエーションで売却を果たしたCiatechの創業者、マルセロ・サトウ氏のインタビューです。 起業当初のアイディアは成功を収めるまで何度もピボットするものだと言われますが、Ciatechの場合もまさにその代表例です。どのような変遷を経て現在の業態に至ったのか、第一章では創業当初の試行錯誤の様子を語ってくれます。 マルセロ・サトウ(Marcelo... Read More

ブラジルで2頭目のユニコーン誕生!ブラジルのPagseguroがNYSEでIPO

NYSEに上場したPagseguro

1月3日に中国のカーシェアリング大手、滴滴がブラジルの99を買収してブラジル初のユニコーンが誕生したとして大きな話題になりました。 そのわずか3週間後、1月24日に今度はブラジルの決済サービスのPagseguro(パグセグーロ)がニューヨーク証券取引所への上場という形で第二のユニコーン誕生となりました。アメリカでもスナップチャット以来の大型上場としてした報道のされかたもしています。 調達額だけで11億ドルで、企業価値は75億ドルとユニコーン5頭分の大きさです。売上高が2016年度が4.3億ドルですからちょっとバリュエーションが高すぎるようにも見えますが、最終四半期の売上成長率も140%と相変わらずの急成長を遂げています。IPO後株価は30%上昇したあたりを推移しているようなのでまずまずの出だしでしょう。 Pagseguroは2006年にメディアグループUniverso... Read More

ブラジルのビットコイン・仮想通貨事情(3) アルトコイン取引のポテンシャル

ブラジルのビットコインセミナー

冒頭の写真はたまたま昨日Weworkで開催されたBitcoin関連のセミナーです。大手ビットコイン取引所のFoxBit関係者などが登壇してパネルディスカッションなどをやっていました。 立ち見も出る盛況度合いでしたし、来てる人もごくごく一般の方々だったんで、ブラジルでのビットコインは過熱気味だなと改めて思いました。 さて、今回はブラジルのアルトコイン・ICO関連について書いてみようと思ったんですが、実はあまりネタがないんです・・・・。 というのも、ブラジルのビットコイン取引所の大手はあくまでビットコインの取引のみに終始しています。現状ではビットコインって何?っていう段階なので、リップルとかイーサリアムとか言ってもなかなか一般にはわかられないでしょうから、現時点ではビットコイン一本で行くのは戦略的には正しそうな気がします。ブラジルの取引所は本格稼働してからせいぜい2-3年しか経っていませんからビットコインのことだけで手一杯なんでしょう。   したがってアルトコインをブラジルで買おうとしたら名前もきいたことがない零細取引所に頼らざるを得ません。ただブラジルの零細仮想通貨取引所にお金を出すのはさすがに怖くて手が出せる人はものすごく限られるでしょう。仮想通貨関連の情報サイトを見てもアルトコインの取引所としておすすめされているのはPoloniexやBitrrexなどで、国内取引所を探すこと自体が割と大変です。 でも、視点を変えて考えると、ブラジルのアルトコイン取引はまだまだこれからという段階で、競争も限定的ですから、日本の取引所の海外進出はまだまだチャンスがあるということかもしれません。 日本はビットコイン先進国としてレピュテーションが高いですし、一般論としても日本=信頼という図式が一般にも成り立つので、ブラジルのスタートアップと提携するなどで入ってくるチャンスは大いにあると思います。 Bitflyerさん、Coincheckさん、Zaifさん、はたまたDMMさん、GMOさん、是非ご検討ください。  ... Read More

ブラジルのビットコイン・仮想通貨市場(2) 税務・規制編

Bitcoin Brazil

今回のブログでは法規制や税務関連について書こうと思っていたのですが、 先日のブログの後、ブラジルでのビットコイン保有者数に関する記事を発見したので、まずは再度日本とブラジルのビットコインに関するアクティブさの比較をしたいと思います。   ビットコイン利用者数と一人あたり利用額 ブラジルでのビットコイン利用者数は約100万人、ブラジル国民の約0.5%です。 前回に書いたブラジルのビットコイン取引所大手のMercado... Read More

ブラジルのビットコイン・仮想通貨事情

国別Bitcoin取引高

日本のメディアでビットコインについて毎日メディアで報じられているようですが、南米ブラジルでもビットコインに対する過熱感が高まっています。 タクシードライバー(私はタクシー乗らないんでUBERドライバー)が話題にする=もはや売り局面と言ってもよい状況はブラジルでも同じです。また、ビットコインがらみのスタートアップに合うと日本での取引高の大きさから、日本とのネットワークを持つ私への興味も高まっているようです。 自分の整理も含めてブラジルのビットコインを含む仮想通貨事情について少しずつまとめてみたいと思います。   取引高は世界15位。でも日本の700分の1 日本がビットコイン取引高首位になってから数か月たっています。本ブログ執筆時点の2018年1月21日のCryptoCompareのサイトを見てみると、この24時間での取引高として、ブラジルは世界で15位です。 ただし、この24時間での取引量は日本円で約3億円相当、同時期の日本円取引高は2145億円ですので、日本の約700分の1という状況です。人口は日本の1.5倍くらいいて、GDPは日本の35%程度なわけですから、金額的には圧倒的に小さいと言わざるを得ません。(富裕層はブラジル国外の口座でUSDベースで取引しているかもしれませんが) 円、米ドル、ユーロ、韓国ウォンの4通貨にUSDTとAICを加えるとビットコイン取引量全体の98.5%を占めるわけなので、それなりに頑張っていると言えるかもしれません。 ブラジルの取引量の増加はビットコイン全体の取引量の増加とほぼ同じペースではありますが、2016年12月から2017年12月までに75倍に増えており、国内でも注目度が高まっているのは間違いありません。   ブラジルの仮想通貨取引所 ブラジル国内には11の仮想通貨取引所があります。 国内シェアトップのFoxBit社がビットコイン取引量全体の42%、2位のMercado... Read More

Esporte Interativo創業者インタビュー:スポーツビジネス界の風雲児Part 3:スポーツ業界での起業を目指して

エディガル・ディニズ

ブラジル・ベンチャー・キャピタルの起業家インタビューシリーズ。 ブラジルで新規参入の難しいメディア・コンテンツ業界でエディガル・ディニズの企業から米タイムワーナーグループのターナー社へ売却までのストーリー。 最終章では自分が育てた企業を売却するに至る背景が語られます。 最後の起業家へのメッセージは国を問わず示唆に富みますので是非参考になさってください。   インターネット配信へのチャレンジ スポルチとして独立したチャンネルでの配信後も、困難な状況は続きましたが、何とか営業を続けられるだけの収益が入ってきましたが、私たちの独立したチャンネルではなかなか視聴者数が増えずにいました。 一方で、国内の有料ケーブルテレビの契約者数はかなり上昇していました。ケーブルテレビのチャンネルの一つとならなければ、他の企業に遅れを取るのは目に見えていました。 しかし、そこから段々と競争や妨害が激しくなりました。特に、元クライアントだったグロボからの妨害は厳しいものでした。 グロボテレビは非常に大きなテレビ局で、重要なコンテンツも持っているので、有料ケーブルテレビ部門である、グロボサット(Globosat)という子会社は大手有料テレビ局のスカイ(Sky)やネット(Net)といったケーブルテレビ会社のコンテンツ選択に影響力を持っていました。 ケーブルテレビ会社自体がコンテンツを自由に決められず、グロボにどのコンテンツを入れるか相談しなければいけなかったのです。グロボは私たちと同じコンテンツ配信会社ですので、競合に命運を決められている状況でした。 結果的に、私たちのチャンネルをケーブルテレビのメニューに入れることをグロボが拒否し、無料でコンテンツを提供したとしても番組枠に入れてもらえないことがわかりました。 厳しい状況でしたが、持っているコンテンツの視聴者を増やす方法を検討していく中で、インターネットを主軸にしはじめました。 2012年、すでにアメリカではネットフリックスがオーバーザトップというストリーミングでのコンテンツ配信で成功していました。私たちは同じくストリーミングの配信モデルでをエウ・プラス(El Plus)というコンテンツを提供し始めました。 この1年後にネットフリックスがブラジルに参入してくることになり、ブラジルで初めてのストリーミング配信を私たちがやることができたのです。   戦略的パートナーによる状況の打破 エスポルチ・インテラチ―ヴォはゴールドマン・サックスに依頼して戦略的な資本提携先を探し始めました。 当時、HDテクノロジー導入などで投資が必要だったので、海外の大手パートナーを株主に迎えることで資金力を増強するとともに会社としての影響力を増して、大手ケーブルテレビとの取引を有利にしようと考えてのことでした。 2013年の半ばにはタイムワーナーグループであるアメリカのターナー社から約7千万レアル(約25億円)の出資を受け、エスポルチの株37%を保有する株主として迎え入れました。 しかし、私たちの考えとは裏腹に、ターナー社参画後も他の企業の抵抗は続いたため、現状を打破すべく大きな投資に打って出る必要があったため、2014年のチャンピオンズリーグ独占権を買い取りました。 これまでもチャンピオンズリーグの放映権を購入してきましたが、それまでの契約には独占権もなく、民間放送でしか放映出来ないという制限付きでした。ブラジル内での競合もほとんどなかったので、契約金額もいまにしてみれば非常に小さなものでした。 ただ、この2013年を超えたあたりではケーブルテレビも力をつけていましたし、私たちが過去に持ってきたことでチャンピオンズリーグがブラジルで十分収益をあげられるコンテンツだということが証明されていたので、同じ条件の放映権ではケーブルテレビや競合でも放送できてしまうために、私たちの独自性を打ち出せないという問題がありました。 ネットフリックスに先立って始めたインターネット配信も当時はタイミングが早すぎて十分な事業に育っておらず、インターネットがブラジルに普及していれば、有料ケーブルテレビとは独立した形で事業を続けることができ、また違った結果になっていた可能性も大いにあると思いますが、当時の状況ではスカイやネットを使わずに競争に残るのは無理でした。 しかし、この投資は自己資金だけではまかないきれない金額だったため、ターナー社から更なる出資を受ける必要が出たため、すでにターナー社の株式持ち分も大きく、これ以上の出資を受けた場合に、私達が小数株主としてとどまるメリットもないと判断し、エスポルチの100%をターナー社に売却しました。   エスポルチ・インテラチ―ヴォとしての成功 株主ではなくなったものの、引き続きエスポルチ・インテラチ―ヴォの経営陣として指揮を執り続け、チャンピオンズリーグという人気コンテンツの独占権利を得たことで、ネットやスカイはエスポルチ・インテラチ―ヴォを有料チャンネルの番組枠に入れずにはいられなくなっていました。 視聴者の猛烈な要望を受けたのでしょう、最初にネッチが、その後スカイが、それぞれエスポルチ・インテラチ―ヴォをチャンネルの一つとして受け入れることになりました。 また、翌年の2013年には、会社設立最初の大きなプロジェクトであったリガ・ノルデスチの復活という喜ばしいニュースもありました。10年間にも及んだ裁判が終わり、また私たちがこのリーグの運営に参加することができるようになりました。出資を受けた結果エスポルチ・インテラチ―ヴォとしては大きく前進することができました。   新たな始まり 最終的に会社の100%の売却が完全に終了したのは2015年2月でした。 それから更に1年間、経営に携わりましたが、また新しいプロジェクトを始めるべく、家族と一緒にアメリカのシリコンバレーに引っ越しました。 かねてよりシリコンバレーの生態系、シードアクセラレーターやキャピタルベンチャーについてもっと深く知り、新しい起業家達とのネットワークを作りたいと強く考えていました。 その後、小さなスタートアップへの投資を行って経営のサポートをしつつ、自分で新しく起業する為の準備をしています。 今年の初めにアメリカからブラジルへ戻ってきて、本格的に事業を立ち上げる準備を進めています。今度の事業はシンプルに言えば、様々なスポーツ関連の組織がで簡単に動画配信できるようなオンラインプラットフォームのサービスを考えています。 起業や新たなサービスを提供してきた中で思うのは、やはり自分はグローバル大企業で働くのには合わないといことです。自分が経験したからこそ言えることですが、大企業の社内政治は起業をするのに必要な自由と自主性を奪ってしまうのです。結局、社内のマネジメントに多くの時間を費やしてしまい、新しいことが出来なくなってしまう。 エスポルチ・インテラチーヴォの成功の秘訣は、社内調整に私達の時間をそれ程使わずに成長できたことだと思います。私がプロジェクトに携わったり取引するなどで垣間見てきた他の大企業はその部分でいつも非常に難しい状況にあると思います。   ブラジルスタートアップのエコシステム 私が起業を始めた90年代後半に比べると、今のブラジルはスタートアップが発展しやすい、非常によいエコシステムができていると思います。勿論、シリコンバレーには程遠いですが、基本的な考え方・土壌がが違うので、単純に比べられないと思います。 ブラジルのスタートアップが更に発展するには、文化的な要素が変わっていかなければいけないと思います。例えば、私自身の経験を例にすると、ターナー社を退職すると決めた時、沢山の人から良い役職、良い給料を貰っているのに、何が不満なんだと聞かれました。 私は今、大企業からの招待を断り、就職先を敢えて探さずに、ゼロから新しいことを始めようとしています。この様な考え方は、ブラジルでは自然だと思われません。まだまだブラジルでは、起業家になるのは良い仕事に就けなかった人だとすら考えられてしまう偏見がまだあるように思います。 シリコンバレーでは起業家が次から次へと新しいプロジェクトを始め、多くのプロジェクトが失敗に終わる中で、少数が成功します。重要なのは多くの人がたくさんのプロジェクトを始めることです。 もしブラジルが、起業に関する手続きを簡易化してくれれば、だいぶ良くなるとは思います。例えば会社設立手続きの官僚的なところや、複雑な税制の簡素化などが行われるとブラジルのエコシステムもさらに良くなると思います。   起業を志す人へのアドバイス 起業を始める前に、起業してからの困難に対して現実的に考える様に心がけてください。 明日の保証がない人生を生きる覚悟が必要です。 エスポルチの歴史を振り返っても例外ではなく、私達は何度も新たなことをゼロから作り上げることをを繰り返さなければいけませんでしたし、資金が切れて倒産する寸前まで行ったことも1度ではありません。 その反面、自分の努力が実を結ぶのを見るほど人生で嬉しいこともありません。特に、自分自身のパッションに基づいて活動しているのであれば尚の事です。 シリコンバレーのベンチャーキャピタルがよく言うことですが、起業家には2種類、「ビジョナリーとマーセナリー」がいます。 ビッグビジネスにまで発展するのは最初のグループでビジョンや夢を実現すべく始めたビジネスで、最初から金儲けが目的となってしまっているビジネスはそれほど大きな成功を収めることはありません。あなたにはお金に関係なく、本当にやりたいことはありますか?   起業家達へ三つのメッセージ 「壁もありますが、ブラジルはビジネスチャンスが沢山あります。この国には色々な分野に置いて、大きな市場がありますが、それと同時に、現状のサービスのクオリティがまだまだ低いので、それを解決するニーズがあり、そこにビジネスチャンスがあるのです。」 「私自身、まだまだ起業するエネルギーもありますし、次の事業ではまた異なったアプローチをするとは思いますが、一つだけ、確実なことがあります:私は絶対に縦割りの大企業で働きたくありません。大企業の社内政治は、起業をするにおいて必要な自由や自主性を奪ってしまう可能性があるからです。 「起業を始める前から、起業後の困難に対して現実的に考えることはとても重要です。そして、保証のない明日を生きるには、自分自身を良く知る、という準備がとても重要になってきます。」 エディガル・ディニズ(Edgar... Read More

Esporte Interativo創業者インタビュー:スポーツビジネス界の風雲児Part 2:スポーツ業界での起業を目指して

エディガル・ディニズ

ブラジル・ベンチャー・キャピタルの起業家インタビューシリーズ。 ブラジルで新規参入の難しいメディア・コンテンツ業界でエディガル・ディニズの企業から米タイムワーナーグループのターナー社へ売却までのストーリー。 第二章では企業から安定した収益減を得るまでの試行錯誤の様子が語られます。   大企業との争い ヴィトリアとのプロジェクトのお蔭で、私達はブラジルのクラブが年間を通してどの様に動くのかを理解しましたが、そこで驚いたのは、クラブが競合チームが2つしかない州大会に6ヶ月もの期間を費やしていたことです。 競合が二チームしかないので、最初からどのチームが決勝に残るのかを分かっているわけですから、大会の大部分を盛り上がりに欠ける消化試合のようなものなのです。そこにたくさんのチームが年のほとんどの時間を費やしていたのです。 その現状を見て、新しい大会の開催を考えました。2年前に成立していたペレ法により、独立リーグの立ち上げが合法化されていたので、大会開催自体は法律的には可能でした。... Read More