トレンドレポート | 中南米テック業界 フィンテック編

近年、特に成長著しい中南米のスタートアップシーン。BtoC向けの消費者サービスやAgri-Tech(農業テック)が目立っていましたが、近年は世界的に盛り上がりを見せるフィンテックサービスが中南米内でも急激に台頭してきています。今回は今年大型の資金調達を成功させた3つの中南米のフィンテックスタートアップを取り上げます。   Accountfy ブラジルのサンパウロを本拠とし、BtoB向けSaaSサービスを提供しています。このプラットフォームは、ユーザー企業の会計/管理/財務活動における意思決定をサポートする財務指標管理ツールです。企業の財務活動のデジタルトランスフォーメーションを加速し、月々の業務負荷を最大10分の1程度まで減らすことができるとしています。 Accountfyのビジョンは、あらゆる企業の経営レベルの財務管理サービスプラットフォームを提供することで、各社のCFOの右腕となる事業となることです。ユーザーは事業会社だけに留まらず、監査法人やPEファンドといったプロフェッショナルファームにも多く採用されており、提供地域も中南米だけでなく北米や欧州へ今後展開していく予定とのことです。   A55 こちらもサンパウロ拠点のフィンテック企業です。A55はオルタナティブ・レンディングと呼ばれる分野でのソリューションを提供しており、SME(中小企業)向けに収益担保型のクレジットサービスを提供しています。銀行口座、請求管理、ペイメント手段、クレジット情報といった情報とプラットフォームが連携することでSMEの引受を行います。 彼らは中南米における融資プラットフォームサービスプロバイダーとなることを目指しており、2年前の2018年に事業を開始して依頼、ブラジルとメキシコで多数の顧客を抱え、事業を拡大しています。   ADDI ここまでブラジル拠点のスタートアップが続いていましたが、最後は、コロンビアの首都ボゴタを拠点とするフィンテック企業です。2018年創業で、さらに今のパンデミック禍の中、シリーズBラウンドの資金調達を成功させました。2019年にはシリコンバレーの名門VCであるa16zからも資金を調達しています。 ADDIは、コロンビアにおいて一般消費者がクレジット購入などの金融サービスを利用するためにハードルのある現況をテクノロジーで解決しようとしており、コロンビア全国の店頭でクレジット/ローン購入を可能にしています。コロンビアでは小売の90%がまだまだオフラインの販売店で行われているという背景から、実店舗でのサービスから開始し、現在はEコマースと実店舗両方の小売業者へデジタルソリューションとして提供しています。   参照 Accountfy... Read More

登壇者紹介 vol.8 – Agronow社 Rafael Coelho氏

11月22日(金)に、第2回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラム2019をサンパウロ市内で開催します。日本からもゲストをお迎えし、ブラジルと日本で注目の各種スタートアップやビジネスに迫る貴重な機会です。 お申込みはこちらからお願いします。 フォーラムの登壇者もこのブログでご紹介していきます。   Rafael... Read More

登壇者紹介 vol.6 – ソフトバンク Felipe Fujiwara氏

11月22日(金)に、第2回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラム2019をサンパウロ市内で開催します。日本からもゲストをお迎えし、ブラジルと日本で注目の各種スタートアップやビジネスに迫る貴重な機会です。 お申込みはこちらからお願いします。 フォーラムの登壇者もこのブログでご紹介していきます。   Felipe... Read More

ブラジル初のユニコーン誕生でスタートアップにプラスの影響 南米のカーシェアリング業界(3)

ブラジル カーシェアリング

中国の滴々の99買収で注目を集めるブラジルのカーシェアリング業界のまとめ第三弾です。 ユニコーンの誕生でブラジルのスタートアップエコシステムの活性化が進むでしょう。 (前回のブログはこちら) 1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題 2 ブラジルのカーシェアリングはUBERの圧倒的優位な中、決着間近 3 ブラジル初のユニコーン誕生でスタートアップエコシステムにプラスの影響   今回の滴滴の99買収時の企業価値はUS10億ドルと言われています。これで99はブラジル初のユニコーン企業となったことを意味します。 下記のTechCrunchの記事によると2017年1月に投資した100億ドルに加えて今回900億ドルを出資、うち600億ドルは既存株主に、300億ドルは会社への資金注入となっています。 https://techcrunch.com/2018/01/03/didi-confirms-it-has-acquired-99-in-brazil-to-expand-in-latin-america/ これまでの99への投資家をCrunchbaseで見てみるとMonasheesというブラジルの最古参のベンチャーキャピタル、米系のQualcomm、Tiger... Read More

UBERの圧倒的なシェアで勝負あり 南米のカーシェアリング業界(2)

ブラジル カーシェアリング

中国の滴々の99買収で注目を集めるブラジルのカーシェアリング業界のまとめ第二弾です。 (前回のブログはこちら) 1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題 2 ブラジルのカーシェアリングはUBERの圧倒的優位な中、決着間近 3 ブラジル初のユニコーン誕生でスタートアップエコシステムにプラスの影響   2 ブラジルのカーシェアリングはUBERの圧倒的優位な中、決着間近 ブラジル、サンパウロでのカーシェアリングのシェアを見ると8-9割と圧倒的なシェアを誇っているのはUberで、次に今回買収された99が10-15%程度、Cabifyが数%という状況です。(各種ソース+独自調査の結果を含めた推測) また、サンパウロ以外ではUBERしか使えない都市も多く、ブラジル全体でのシェアはUBERが圧倒的といっていいでしょう。 UBER以外のサービスはかなりの割引クーポンの乱発、登録ドライバー向けの最低賃金保証や手数料軽減等の優遇策を打っていましたが、今は料金も利用者にもドライバーにもほぼ同等でプロモーションでシェアを覆すところまではいけなかったようです。 この競争の中で99と同時期にサービスインした老舗のEasyTaxiは現時点では高級タクシーに特化し、一般ドライバーを呼ぶことができない状況になっています。   ドライバーの数はUBERが50万人というデータを公表していますが、UBER、99はオンラインで登録が完了するのに対して、CabifyはCabifyのオフィスで必要書類を届けることが必要とされているので、やはりUBERが多いようです。(複数アプリでの兼業が認められているので、登録ドライバー数だけを見てもなかなか判断はできずアクティブなドライバー数を見ないといけないですが) 業界をシェアトップとの相対的なシェアで判断するRMS(Relative... Read More

滴滴の99買収でブラジル初のユニコーン誕生 南米のカーシェアリング業界(1)

ブラジル カーシェアリング

中国の滴々がブラジルのカーシェアリング大手99を買収したことはブラジルでも大きなニュースになっています。ブラジルを含む南米ではカーシェアリングは一般的なものになっていて、日本よりもかなり浸透しています。 以前にもこのブログで南米のカーシェアリング業界について書きましたがここで最近の状況を含めてアップデートしたいと思います。 1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題 2 ブラジルのカーシェアリングはUBERの圧倒的優位な中、決着間近 3 ブラジル初のユニコーン誕生でスタートアップエコシステムにプラスの影響   1 南米でのカーシェアリングも規制対応は大きな課題 日本では規制の関係でカーシェアリングがなかなか普及していません。 中南米ではブラジルに限らず、メキシコ、チリ、コロンビア、アルゼンチンでもUBERを含む複数のサービスが普及していますが、実は規制については似たような状況です。 異なるのは南米では元々規制を無視した白タクが日本よりも一般的だったこと、タクシーに不満を持つ消費者が多いこと、物事が法律通りに進まないビジネス環境、があることで業界・行政と小競り合いを繰り返しながら、一部のサービスを除いて多くのサービスが違法、もしくはグレーゾーンの中で運営を続けている状態が数年続いている状況です。 ブラジルでの規制当局との関連を紐解いてみると、まず最初にスタートしたのは99とEasyTaxiで、タクシーのみを呼べるアプリとしてサービスをスタートしました。その後、Uber、Cabify等が参入して一般ドライバーを呼べる状況が起きたことで99とEasyTaxiも一般ドライバーを呼べるサービスを加えて追随しました。 こうしたサービスは最初は納税を個々のドライバーに任せることで税務の問題を回避しようとしていたのですが、タクシー組合が違法として訴訟を起こし、多くの市でアプリ側がタクシーと同様の納税をすることでひとまず決着を得たので現時点ではUber含め、多くの市では合法なサービスと認められています。 なお、ブラジルの場合は規制の単位が市なので市によって使えるところ、使えないところがありますし、空港付近などで特別なタクシー協会の力が強いところはアプリ側が自主規制してサービスを使えないエリアを設定していた時期などがありました。 その後、現在再度ブラジルで争われているのは、タクシーと同様の車両・ドライバーに対する要件をカーシェアリングのドライバーにも適用するべきだという点です。 例えばタクシーに使える車両は必要な費用を払い、手続きを踏むことで当局から正式にタクシー業務が可能な車両として登録されます。手続きの中で必要な保険に入ること、車検を受けていること、車両の所有者が納税等の当然の義務を果たしているかが確認されます。 また、ドライバーも必要な手続き・テストを得ることで過去の違反歴や犯罪歴、適正な運転免許を保有しているかどうかを確認されます。 最終的な結論が出るまでにまだ時間がかかりそうですが、ドライバーと話していても「規制ができたら必要な登録作業を行うだけ」という人も多く、サービス自体が根本的になくなることはなさそうです。 なお、コロンビアでは通常のUBERは非合法ながら、UBER... Read More